長野の葬儀

「いまどき」の長野県の相続・お墓・お葬式のことがよくわかる

喪主・親族の心得⑮ 神式の弔事〈1〉

2021年07月15日

【神葬祭】

 神式の葬儀は「神葬祭(しんそうさい)」と呼ばれ、故人を一家の守護神として祀る、日本古来の独特の儀式です。本来の神葬祭には多くの細かな手順やしきたりが存在しますが、現在では簡略化されてきています。また地域文化との結びつきが強く、地域ごとに微妙に違いがあるのも特徴です。ここでは一般的な弔事の流れを紹介します。

【枕直しの儀】

 臨終を迎えたら末期の水をとって湯灌(ゆかん)を済ませます。そのあと死に化粧を施し、死に装束を着せて、遺体を賓室(故人を安置する部屋)に移します。死に装束は白い小袖に白足袋ですが、最近は故人が生前好んだ衣服を着せることも多いようです。

 賓室では遺体を北枕に寝かせ、胸元で合掌させます。また顔には白い布をかぶせ、胸元に守り刀を置きます。
 遺体の枕元には屏風を立て、その前に「案」と呼ばれる白木の八足台を置きます。案の上には神饌(しんせん・洗米・塩・水・御神酒)を供え、両脇に対の榊と燭台を立て、枕飾りをします。地方によっては屏風を逆さに立てるところもあります。

【帰幽奉告の儀】

 故人が亡くなったことを氏神様、神棚、御霊舎(みたまや)に奉告する儀式を「帰幽奉告の儀(きゆうほうこくのぎ)」といい、奉告が終わったら神棚の扉を閉じて、前面に白紙(半紙)を貼り付けます。
 遺族や喪に服す必要のある親族は氏神様を祀る鎮守神社に入れないため、世話役や近隣の人、葬儀社の人などに奉告をお願いします。この際に、氏神様の神職に葬儀の日時の相談と、斎主(神葬祭を司る役目)のお願いをします。
 また病の平癒など故人のために特別に祈願をした神社があれば代参するか、遥拝(遠く離れたところから拝む)などして、祈願を解きます。

【神棚封じ】

 神様から穢れを遠ざけ、故人の霊を慰めることに専念するため、神棚の扉を閉じて半紙を貼るのが「神棚封じ」です。死の穢れ(気が枯れた状態)が神聖な場所に入らないようにするための行いとされています。
 かつては第三者が行うものとされていましたが、最近では遺族が行うことが多いようです。半紙で封じた神棚は、亡くなってから50日目の忌明けをもって貼った本人が元通りに直すのがしきたりです。

【納棺の儀】

 「納棺の儀」は遺体を棺に納める儀式です。遺族や近親者が集まり、一回深くおじぎをする「一拝」をしたあと、遺体を棺に納め、遺体の上を白い布で覆い、ふたを閉めます。 

 このあと通夜祭(つやさい)の祭壇へと棺を運び、祭壇に遺影や供物を飾って、喪主から順に礼拝を行います。

【喪主・世話役と葬儀社の決定】

 神社は聖域なので葬場としては使えません。「神葬祭」は自宅や葬儀会場で行います。葬儀社を選ぶ際は、これまで神葬祭を数多く行っている経験豊富な葬儀社を探すとよいでしょう。ほか喪主や世話役などの決め方、葬儀の連絡や葬儀社との打ち合わせ、服装などは仏式と大きくは変わりません。

【通夜祭と遷霊祭】

 神式の場合、仏式の通夜にあたる儀式として「通夜祭」と「遷霊祭(せんれいさい)」があります。本来、別々の儀式ですが、現在では通夜祭の日に遷霊祭も同時に行われます。また、このふたつの儀式を合わせて通夜祭と呼ぶこともあります。

 儀式のあとは、仏式の通夜振る舞いにあたる「直会(なおらい)」の席を設け、故人を偲びます。

【通夜祭の進行】

 通夜祭を行うとき、参列者は通夜祭の会場に入る前に「手水の儀(ちょうずのぎ)」を行う地域があります。自宅の場合は玄関先、葬儀会場の場合は会場の入り口前で行うことが多いようです。儀式はお祓いのあと、斎員(神職)が祭壇に神饌を供え、斎主が通夜祭詞(つやさいし)を奏上します。次に玉串を奉り拝礼する「玉串拝礼(たまぐしれいはい)」を行います。玉串礼拝は斎主につづいて喪主、遺族、弔問客の順に行います。

【遷霊祭】

 遷霊祭は故人の御霊を遺体から霊璽(れいじ)に遷し留めるための儀式で「御霊遷(みたまうつし)」とも呼ばれます。霊璽は仏式の位牌にあたるものです。主要儀式となる「遷霊の儀」は葬儀会場の明かりを落とし、暗がりの中で厳かに執り行われます。
 霊璽は祭壇に安置した「仮霊舎(かりみたまや)」に納められます。その後、葬儀会場の明かりをつけ、一同が着席して、斎員が献饌(けんせん)を行い、斎主が遷霊祭詞(せんれいさいし)を奏上して玉串を捧げ、拝礼して終わりとなります。

【直(なおらい)】

 通夜祭や葬場祭のあと、故人を偲びつつ、神職や世話役、手伝ってもらった人への慰労と感謝を表して料理を振る舞う宴の席「直会(なおらい)」を設けます。
 地域によっては葬家の家の火を使わないしきたりなどがあり、この場合は世話役など、他家の火で料理の支度をするか、仕出し料理などを手配するケースが多いようです。