長野の葬儀

「いまどき」の長野県の相続・お墓・お葬式のことがよくわかる

喪主・親族の心得⑱ プロテスタントの弔事

2021年09月15日

【聖書と祈りが中心】

 プロテスタントの葬儀は聖書と祈りを中心としたもので、カトリックに比べ自由度が高く、形式にこだわらないという特徴があります。
 プロテスタントは偶像崇拝を行わないため、祭壇の飾りも花を飾る程度でシンプルです。また洗礼(教会への入会の儀式)を受けていない人でも葬儀が行えるのも特徴です。
 一般的に前夜式、葬儀・告別式で用いる讃美歌や聖書の朗読箇所は、故人が愛唱していた讃美歌や聖書の箇所である場合が多いので、事前に尋ねておくとよいでしょう。

【危篤・臨終に際して】

 信者の容体が危篤状態になった段階で、所属する教会に連絡をして牧師を呼び、信者の意識があるうちに「聖餐式」を行います。
 聖餐式は牧師がパンとぶどう酒を信者の口に与え、聖書の一節を読み、信者が安らかに天に召されるように祈るものです。このとき、家族も信者の枕元に付き添って、牧師と一緒に祈りを捧げます。
 信者が臨終を迎えたら、遺族は末期の水をとり、遺体を清めて、死に装束を施します。装束は生前に愛用していた衣服に着替えさせるのが一般的です。

【納棺式と前夜式の準備】

 納棺は亡くなった日か翌日に行います。納棺の際は牧師が立ち会い「納棺式」を行います。牧師が祈りを捧げ遺族の手で遺体を棺に納めます。遺体に白い布をかけ、遺体の周りを白い花で埋めてからふたをします。棺は黒い布で覆い、前夜式を行う会場に安置します。
 祭壇は棺の枕元に小机を置き、白または黒い布で小机を覆ったものを作ります。祭壇には十字架、ロウソク、遺影を置き、祭壇の両脇に白い花などを飾ります。 
 このあと讃美歌を斉唱し、聖書朗読のあとに祈りを捧げて、牧師が納棺の辞を述べます。ふただひ讃美歌を斉唱し、祈りを捧げて式は終わります。 
 前夜式・葬儀に向けての教会との日程など打ち合わせや、喪主の決定、世話役や弔辞の依頼などはカトリックと同様です。

【前夜式】

 「前夜式」は仏式の通夜にあたるもので、教会で行うのが一般的です。納棺式に引きつづいて行う場合が多いようで、棺を教会に移す際も牧師に立ち会いを依頼します。
 前夜式に決まりはありませんが一般的には讃美歌の斉唱、牧師による聖書の朗読が行われ、牧師が主に祈りを捧げます。つづいて再度、聖書の朗読があって牧師が祈祷を行います。
 このあと讃美歌を斉唱して、牧師が故人の人柄などを話す説教が行われます。最後に牧師、喪主、遺族、親族、参列者の順に献花を行い、遺族代表が感謝の言葉を述べて、前夜式を終了します。参列者が多い場合は遺族代表の言葉のあと献花を行う場合もあります。
 仏式の通夜振る舞いにあたるものは特にありませんが、牧師や近親者で故人を偲びつつ茶菓子や簡単な食事を囲む、茶話会などを行う場合もあります。

【出棺式】

 プロテスタントの葬儀は一般的に教会で行われます。葬儀の日に棺を自宅などから教会へ移動する際は、牧師を呼んで「出棺式」を行います。
 出棺式は牧師の指示に従い讃美歌の斉唱、聖書の朗読、出棺の祈りを捧げます。棺の中に献花をしたあと棺のふたを閉め、棺は遺族が霊柩車まで運び、教会へと移します。

【葬儀・告別式】

 プロテスタントでは、人は死後、天に召されて神のもと安らかに在るという考え方があり、祈りは神のために捧げられます。葬儀も故人の冥福を祈るために行われるのではなく、神への感謝と遺族を慰めるために行われ、聖書朗読と神への祈りが中心となります。
 カトリックと異なり葬儀は告別式とはわけずにつづけて行われます。またプロテスタントには宗派がいくつもあり、宗派によって葬儀の内容や式次第が異なりますので、教会や牧師、葬儀社とよく打ち合わせをする必要があります。

【出棺から納骨まで】

 告別式のあと、遺族は棺を覆っていた布をとり、ふたを開けて最後の対面を行います。花を棺に入れたらふたを閉め、遺族が霊柩車まで運び、火葬場に向かいます。出発前に喪主が会葬者にお礼のあいさつをします。
 火葬場では「火葬前式」を行います。棺の上を花や十字架で飾り付け、牧師が聖書を朗読して祈りを捧げます。遺族も共に祈りを捧げ、讃美歌を斉唱し、火葬となります。
 火葬のあとの骨あげは仏式やカトリックと同様です。骨壺は喪主が自宅に持って帰り、納骨の日まで自宅に安置します。プロテスタントでは遺骨を飾る祭壇は設けません。小机などに遺骨を安置し、遺影や花を飾ります。
 この後、仏式の精進落としのように、牧師や親族たちと「故人を偲ぶ会」を設ける場合があります。

【追悼儀式】

 プロテスタントでは故人を追悼する儀式を「記念式」と呼びます。故人が亡くなってから1週間目や20日目に祈りを捧げることもありますが、一般的には亡くなってから1カ月目の「召天記念日(しょうてんきねんび)」に、自宅か教会、または墓前に牧師を招いて納骨・埋葬の記念式を行うことが多いようです。
 これ以降は特に決まりはありませんが毎年の召天記念日や1年目、2年目、7年目に追悼の記念式を行う場合もあります。
 記念式を自宅で行う場合は、自宅に小さな祭壇を設け、中央に故人の遺影を置き、周囲を花で飾ります。自宅に親族や友人、知人を招いて牧師による祈りと説教、聖書の朗読、讃美歌の斉唱を行って、参列者一同が故人を偲びます。自宅で行う記念式は亡くなってから数年間、1年ごとに行うのが一般的です。
 なお、教会では故人の記念式を行いません。教会の記念日などに故人を含め、天に召されたすべての人たちの記念式をまとめて行うのが一般的です。

【謝礼】

 謝礼はカトリックと同じように教会への献金という形になります。表書きは「召天記念献金」とします。牧師に対して謝礼を渡す場合は「御礼」「御車代」と表謝礼はカトリックと同じように教会への献金という形になります。表書きは「召天記念献金」とします。牧師に対して謝礼を渡す場合は「御礼」「御車代」と表書きして別に包みます。オルガン奏者への謝礼は「御礼」と表書きします。金額もカトリック同様、決まりはありません。迷った場合は教会や葬儀社に相談しましょう。

【供花・花環の注意点】

 キリスト教では、神の前では誰もが平等であるという考え方から、社会的立場を表す名札などをはずして、供花や花環を飾る場合が多いようです。贈り主がわからなくならないよう、世話役には記帳の注意を促しましょう。